りさたろうさんに頂きました。TOPクリスマスノベルです。
 クリスマスにちなんだTOPキャラ達の切なくて優しいお話がオブニバス形式で綴られています。
 素敵な小説をありがとうございました。そして、こんな時期はずれにUPする怠惰な管理人をお許し下さい(苦笑)

HOLLY NIGHT〜聖夜の贈り物〜

<クリスマスプレゼント@>
 お兄ちゃんへ。
 お元気ですか?私は元気です。
 お兄ちゃんは・・・元気なのはわかってるよ。
 毎日お空の上から見ているからね。

 ところでお兄ちゃん。今日ね、なんの日か知ってる?
 12月24日・・・そう。クリスマスイブなんだ。
 懐かしいよね。
 毎年クリスマスイブはクレスさんの家で過ごして・・・
 おばさんが焼いたローストチキンをお兄ちゃんとクレスさんが取り合いして・・・
 それをおじさんとおばさんが笑いながら見てて・・・
 私とゴーリのお父さんは呆れながら見てて・・・

 すごく楽しかった。
 あの楽しいときがいつまでも続く・・・そう思ってたんだよ。
 現実はそうじゃなくて、悲しかったけど・・・
 でも今は平気。空の上からいつもお兄ちゃんを見守れるから。
 全然寂しくないよ。ホントだよ。

 ねぇお兄ちゃん。覚えてる?
 お兄ちゃんたちがくれたクリスマスプレゼント。
 私がワガママ言ったばっかりに、後でお兄ちゃんとクレスさんが怒られたんだよね。
 でも2人とも私がワガママ言ったことを絶対みんなに言わなかった。
 嬉しかったよ。お兄ちゃんたちの優しさが。
 だから・・今日は私からのクリスマスプレゼントを贈るね。
 いつもいつもお兄ちゃんたちに贈られてばっかりで、私は贈ったことなかったから。
 喜んでくれるといいな。
 そして思い出してくれるかな?
 私がワガママ言ったこと。
 思い出してほしいな・・・

 お兄ちゃんとクレスさんが大好き。
 いつでも空の上から見守っているから・・・


<クリスマスプレゼントA>
 オレは扉を開けて、外へ飛び出した。
 ふいにオレの頬をひんやりとした冷気がなでつける。
 思わず身震いした。
 ・・・そうか。そういえばもう12月だったな・・・
 オレはぼんやりとクリスマスのことを思い出した。
 確か今日だったはずだ。クリスマスイブ。
 毎日が戦いの連続で、いつのまにか季節感がなくなっていたんだ。
 クリスマス・・・イブ・・・か。
 そういえば、毎年クリスマスイブはクレスの家で騒いでいたよな。
 オレとクレスがローストチキンを取り合いして、おじさんとおばさんはそれを笑いながら 見てて・・・
 アミィとゴーリの親父は呆れてたっけ。
 懐かしいな。
 ずっと続くと思っていた、幸せな時間。
 でも現実は甘くなかったけど。
 例えダオスを倒しても、もう2度とアミィは。親父は、おじさんとおばさんは帰ってこない。
 それでも・・・クリスマスはまたやってくる。
 今はみんながいて楽しくやっているけど、ダオスを倒して元の時代に帰ったら・・・また巡ってくるクリスマスをオレはどうやって過ごせばいいんだろう?
 もうあの頃には帰れないのに。
 あの温かな時間は戻ってこないのに。
「くれぇなぁ・・・折角のクリスマスなのに・・・」
 オレはため息を漏らし、空を見上げた。空は一面灰色の雲が覆い、今にも泣き出しそうだった。
「雪・・・降るわけないか・・・」
 オレはもう1度ため息を吐いた。
 オレたちが今いるミゲールは年中温暖な気候だから、冬でも雪は降らない。
 でもクリスマスぐらい降ってくれてもいいはずだ。
 空のカミサマも少しくらいはサービスしてくれたっていいのによ。
 ため息をつくと、空に向かって白く冷やされた息が昇っていく。
 そして・・・ふと思い出した。
 昔アミィが言った、とてつもなく大変なクリスマスプレゼントのこと。
 オレたちが後で大人に大目玉をくらった、クリスマスプレゼントのことを。
 

<クリスマスプレゼントB>
 この部屋に入ってから、僕は窓の外を眺めていた。
 たくさんの人が集まるミゲールの町は、今やクリスマス一色だ。
 僕の時代のクリスマスは ささやかなものだったけど、それでも幸せだった。
 父さんと母さん、ゴーリさんにアミィちゃん、そしてチェスター。
 6人で迎えるクリスマスは、本当に贅沢だったと今更ながらに思う。
 だって、大切な人と一緒に迎えるクリスマスだから。
 このミゲールの町のきらびやかなクリスマスとは違うけど、それでも僕は満たされていた。
 でも、そんな幸せな時はもう2度と来ない。
 ダオスを倒し、この旅を終えたとしても。
 あんなに幸せな時間を過ごしたいた僕が、これからも巡ってくるクリスマスをどんな風に迎えることになるのか、想像できない。
 僕の心が満たされるクリスマスを迎えることができるのだろうか・・・?

 はあっと大きくため息をつき、空を見上げる。
 空は全体が暗い雲に覆われていて、今にも雨が降りそうだった。
「雪・・・降るといいですね。」
 ふいに僕の横からミントが声をかけた。
「そうだね・・・でも、ここは温かいから雪は降らないんだ。」
「そう・・・なんですか?」
「うん。神様も今日くらいはサービスしてくれたらいいのにね。」
 僕の言葉が面白かったのか、ミントはくすりと笑った。
「そうですね。・・・雪が降りますように。」
 
 雪・・・初めて見たのはフリーズキールだった。
 あんなに冷たいものだったんだ。そして、とても儚いものだったんだ・・・

 僕の脳裏に“あのとき”のことが浮かび上がる。
 そうだ。“あのとき”は雪なんて知らなくて・・・
 それを少しでも知りたくて、僕とチェスターは宿屋に泊まっていた旅人や、村1番の物知りのおじいさんに聞きにいったんだ。
 雪がどんなものか知りたくて。
 あの子の喜ぶ顔が見たくて一生懸命だった。
 チェスターも思い出しているかな・・・?
 “あのとき”のクリスマスプレゼントのことを。


<クリスマスプレゼントC>
 ミゲールの町に入ったのは今日の夕方頃だった。
 いつになく華やかな町並みに、私は目を丸くした。
 空は今にも泣き出しそうなのに、それを払うかのように地上はお祭り騒ぎ。
 そう。今日はクリスマス・イブだったんだ・・・
 旅をして世界を巡っているため、いつのまにか季節感を無くしていたのね。
 クリスマス・・・
 お母様と毎年ささやかにその日を祝い、お祈りを捧げていた。
 クリスマスが巡る度に、私はお母様と一緒にいられる幸せを感じていた。
 いつまでも続くと思っていた。

 私は、頬杖をついて窓の外を眺めているクレスさんに近づいた。
 この人が経験してきたクリスマスはどんな風だったのだろう?
 きっと穏やかな時間を過ごしていたに違いない。
 今はこの人とクリスマスを迎えることができる。・・・けど、来年は?
 これからも巡り来るクリスマスを私はどう過ごせばいいのだろう?
 今日のようにこの人とクリスマスを過ごすことができるのだろうか?
 私は不安になる。
 こんな不安をクレスさんには見せたくなかった。
 せめて雪が降ってくれれば・・・
 いつかは溶けてしまう雪に、自分の不安も一緒にとかしてほしい。そうすれば私の心は少しでも軽くなる・・・そんな気がするから。
「雪・・・降るといいですね。」
 私はクレスさんに声をかけた。
「そうだね・・・でも、ここは温かいから雪は降らないんだ。」
 残念そうに言うクレスさんの顔は、少し寂しげだった。
「そう・・・なんですか?」
「うん。神様も今日くらいはサービスしてくれたらいいのにね。」
 クレスさんらしい物言いに、私は思わず笑ってしまった。
 クレスさんも私を見て微笑み返す。
 この人の側にいると、私の心は穏やかになる。
「そうですね。・・・雪が降りますように。」
 私は目を閉じてつぶやいた。
 クレスさんの側にいつまでもいられることを心の中で祈りながら。
 そして、クレスさんと過ごせるクリスマスを神様に感謝した。
 この瞬間が、神様からのクリスマスプレゼントだと思えるから・・・


<クリスマスプレゼントD>
「クリスマス・・・か・・・」
 私は読みかけの本をとじ、ため息をついた。
 今はこうしてダオスを倒す旅をつづけているが、毎年クリスマスの日はミラルドと2人で過ごしていた。
 彼女のつくるチェリーパイや、ローストチキンに美味い酒。
 そしてミラルドが側にいるクリスマスが、私にとっては普通だった。
 ミラルドがいないクリスマスなど、考えたこともなかった。
 
 今頃どうしているだろう?
 まぁ元気なのは間違いないとは思うが。
 今年のクリスマスは無理だったが、来年のクリスマスは2人で過ごせるだろう・・・
 私はそう思ったが、考え直した。
 もしこの世界から帰ることができなくなったら・・・どうすればいいだろう?
 もう2度と、彼女のつくるチェリーパイが食べられない。
 それだけじゃない。ミラルドの顔すらも見られなくなる。

 私はそう思うと、鳥肌がたった。
 それだけは困る。
 それだけは嫌だ。

 いつもいつも小言を言っていたが、些細なことでケンカをしていたが、それでもミラルドは私にとっては必要な人間なのだ。
 この世で最も信頼する人間。
 その彼女を失ったら、私はどうすればいいだろうか?

 そしてや今更ながらに自覚した。
 ミラルドは私にとっては大切な存在なのだと。
 彼女の言葉ひとつひとつが、彼女の行動が、彼女の表情が、私の生きる源になるのだと。

 だからこそ、私ははやく私の時代に帰りたい。
 ミラルドが待っているから。
 私が食べられるように甘さを控えたチェリーパイを焼き、クリスマスプレゼントを用意して待っているのだから。
 この世界に平和を取り戻したら、絶対に帰ろう。
 ちゃんと彼女に渡すプレゼントを用意して。


<クリスマスプレゼントE>
 くりすます、というものを私は初めて聞きました。
 里には「くりすます」というものがないからです。
 世界をまわり、「くりすます」というものを体験している私は、世界で最も珍しい忍者でしょう。

「クリスマスってのはね!おいし〜いごちそうをお腹いっぱい食べて、サンタさんからプレゼントをもらう日なんだよ!」
 アーチェさんはそう言って、私に「くりすます」を教えてくれました。
 どうやら「くりすます」には「さんたさん」というお爺さんがプレゼントをくださるそうです。
 何て気前のいいおじいさんでしょうか。
 私は少し感動してしまいました。
 忍者もプレゼントをいただけるのでしょうか?
 少し不安です。

 そんな話を聞いて私が感動していると、私の横ではアーチェさんの言葉を鼻で笑ったチェスターさんが、アーチェさんとケンカをしていました。
 クリスマスの日は心穏やかに過ごす日だとミントさんは仰っていましたが、この2人は相変わらずです。
 アーチェさんとチェスターさんを除く全員が、うんざりした顔をしていました。

 空の上の神様も、「さんたさん」も、「くりすます」は心穏やかにすごしたいでしょう。
 クレスさんもミントさんもクラースさんも私と同じ気持ちのようです。

 だから・・・「さんたさん」にお願いです。
 私が頂きたい「くりすますぷれぜんと」は、「アーチェさんとチェスターさんを仲良くさせてほしい」です。
 お2人が仲良くなれば、みんな心穏やかに「くりすます」を祝うことができます。
 どうか「くりすます」の日だけでも、アーチェさんとチェスターさんを仲良くさせてください。
 お2人が仲良く「くりすます」を過ごしてくれれば、それで私は幸せです。
  
 どうか「さんたさん」、私のクリスマスプレゼントのお願いを聞いてください。


<クリスマスプレゼントF>
「うう〜〜さむ〜〜・・・」
 あたしは体を縮こませて、吹いてくる風から自分の身を守った。
 全く・・・なんでこんなに寒いのよ!?
 この辺ってそんなに寒くないはずなのに・・・
 心の中で散々今日の気候に文句を言いながら、あたしは宿屋へと急いだ。
 あたしが歩くたびに、さっき雑貨屋で買った袋がガサガサと音をたてる。
 今日はクリスマスイブ。
 だからみんなにプレゼントを配るんだ。
 あたしはみんなのサンタさんになるんだ。
 すずちゃんはサンタさんを知らないって言ってたから、きっと喜んでくれるだろう。
 そう思いながら、あたしはくすくすと笑った。
「何笑ってんだよ。変なヤツ。」
 突然頭上から降ってきた声にあたしは素早く反応する。
 見上げてみると、やっぱりアイツだった。
「うっさいな!ほっといてよ!」
 むっとしてまた憎まれ口を叩く。
 ・・・あ〜あ・・・またやっちゃったよ・・・折角のクリスマスなのに、またコイツとケンカするんだ。あたしは。
「あ〜そ〜かよ。ほんっとにおまえって可愛くねーな。」
「あんたなんかに可愛いって言われたくないよ!」
 売り言葉に買い言葉。またしても・・・あたしってば・・・
 アイツはむっとした顔をしてしばらくあたしを見ていたけど、ふうっと息を吐いた。
「あ〜あ・・・やってらんねぇよ。今日はクリスマスだってのに。」
「なによ!元はと言えばあんたが・・・」
「ストップ!」
 あたしがまた言い返そうとしたら、アイツはあたしの口を手で塞いだ。
「やめようぜ。今日くらいは。」
「・・・・」
 そんなに悲しい顔をするから、言えなくなっちゃったじゃない。さっきの言葉の続き。
 仕方ないから、あたしは小さく頷いた。
 確かにそうだよね。今日はクリスマスイブ。
 楽しくすごさなきゃ。・・・そう思ってちらりと仰ぎ見ると、アイツと目があっちゃった。
 そしたらさ、アイツ、普段は見せない優しい顔して笑ったの。
 ・・・反則よ。その笑顔。
 ・・・何も言えなくなっちゃったじゃない・・・
 あたしは俯いて、真っ赤な顔を見せないようにした。
 ・・・あんな笑顔・・・あたしだけしか知らないアイツ。
 なんか得した気がする。
 あたしにとっては、あの笑顔がクリスマスプレゼント・・・なのかな・・・?


<クリスマスプレゼントG>
「そういえばさ、どうして外にいたのよ。」
 宿屋のドアを開けながら、桜色の髪の少女は隣にいる青髪の青年に訊ねた。
「・・・迎えに行けって言われたんだよ。おまえの帰りがあんまりにも遅いから。」
 ぶっきらぼうにそう答え、青年は宿屋へと入っていく。
「ふ〜ん・・・ありがとね。」
 ぽつりと聞こえた少女の声に、一言返事をすると、青年は仲間の待つ部屋へと少女を誘(いざな)った。
 カチャリと部屋の扉を開けると、彼らの目に慌てた様子の金髪の青年が映る。
「どうしたんだ?」
「大変なんだよ!外!外見て!!」
「外?」
 窓際に引っ張られた青髪の青年と桜色の髪の少女は、怪訝な顔をしながら外を見た。
「上、見てください。」
 いつのまにか彼らの後ろに立っていた金髪の少女が指を上に向ける。
「・・・上?」
 よくわからない、と言った感じの桜色の髪の少女と青髪の青年。
 彼らが仰ぎ見たその先には・・・
「・・・雪・・・?」
「雪だ・・・」
 
 薄暗く重い空から ぽつりぽつりと舞い落ちる、白い空からの使者。
 灰色の雲によって人々の心に重い印象を与える空を、使者はどんどんと払拭していく。
 舞い降りる度、辺りの華やかな雰囲気に映え、その白さが益々引き立って行く。

「ミゲールでは雪は降らないと言われていたのですが・・・」
 青髪の青年の頭2つ分くらい下にいる、栗色の髪の幼い少女が感動した様子で外を眺める。
「・・・ま、空の神様もサービスしているんだろうな。」
 少女の肩を叩いて同じように外を見ながら、銀髪の青年が答える。

「思い出すよな・・・あのときのこと。」
 金髪の青年を見ながら、青髪の青年が言った。
「ああ。覚えてるよ。僕たちが生まれて初めて見た“雪”だろ?」
「なにそれ?」
 桜色の髪の少女が訊ねる。
「僕たちが生まれて見た雪はね、羽の雪だったんだ。」
 金髪の青年はそう言うと、にこりと微笑んだ。


<クリスマスプレゼントH>
 アセリア暦4294年 12月24日─
「アミィ、こっち来てみろよ。」
 淡い青髪の少年は部屋の奥に向かって妹を呼んだ。
「なあに?お兄ちゃん?」
 部屋の奥から読みかけの本を手にした、濃い青髪の少女が姿を現す。
「いいからこっち。来てみろって!」
 不思議そうな顔をした少女は言われるままに窓際へと歩み寄る。
「ほら、空見てみろよ。」
「空?」
 窓から空を見上げた少女は、次の瞬間息を呑んだ。
「お兄ちゃん・・・雪だ・・・雪が降ってるよ!!」
「だろ?アミィ見たがってたもんな。」
「うん!」
「良かったな!アミィ」
「うん!すっごく嬉しいよ!!」
「雪ってやつは冷たくてさ、解けやすいんだって。家の中の空気が少しでもあたったら消えちまうんだってさ。だから絶対に外出るなよ?」
「消えちゃうの?」
「ああ。消えたら嫌だろ?」
「うん。」
 こくりと頷く少女を満足げに少年は見下ろし、にっこりと微笑んだ。
 歓声を上げて空に魅入る少女を残し、そっと少年は扉を開けて外へ出ていく。
 向かったのは自分の家の屋根の上。
「ごくろうさん。」
「あ、酷いよ!僕にこんな役を押し付けてさ。」
 屋根の上で大きな袋を持った金髪の少年が、上がってきた青髪の少年を軽く睨んだ。
「手、止まってるぞ。」
「あ、うん!」
 慌てて袋をまさぐり、中から白いものを出すと、金髪の青年はそれをゆっくりと下へと落とした。
「アミィ喜んでたぜ。」
「そうなんだ・・・」
 相変わらず作業を続けながら、金髪の少年は相槌を打つ。
「でもさ・・・外に出てこないよね?」
「大丈夫だって。外に出ると消えちまうって釘さしといたから。」
 オレも手伝うよ─そう言うと、金髪の少年に倣うように青髪の少年は袋の中から白い羽を取りだし、空に向かって蒔き始めた。
「・・・でもいいのかなぁ・・・こんなことして。」
「え?」
「だってこれ・・・村中のクッションや布団から集めたもんでしょ?」
「あ、ああ・・・まぁ黙ってりゃバレないって。」
「そうかなぁ・・・」
 心配そうな口調の金髪の少年と、それと相反するかのように明るい口調の青髪の少年。
 その2人の頭上には厚く薄暗い雲が圧し掛かっていた。
 全ては少女を喜ばせるため。
 雪を見たことのない少女のささやかな望みを叶えるため。
 そのことばかりに頭が一杯で、これから起こることを2人は考えてはいなかった。


<クリスマスプレゼントI>
「あんたたち、そんなことしたの?」
「仕方ねぇだろ。雪見たことなかったんだから。」
 呆れたように息をつく桜色の少女を、青髪の青年が睨んだ。
「でも素敵ですね。妹さんのために・・・」
「お2人ともご立派です。」
 金髪の少女と栗色の髪の少女が互いに青年2人を慰める。
「い、いや・・・やろうって言ったのはこいつなんだ・・・」
「おまえも随分と乗り気だったもんな。」
 顔を見合せて2人の青年が笑う。
「・・・で、その後どうなったんだ?」
 銀髪の青年が絶妙な合いの手を入れる。
「あ、ええ・・・その後・・・っていうよりも次の日なんですけどね、村中のクッションや布団から羽毛がなくなったって大騒ぎになって・・・」
「結局バレちまった。」
 ものすごく怒られたな─青髪の青年が金髪の青年に言う。
「そうだね。でも楽しかったよね。」
「・・・まぁな。」
 青年たちは空を見上げた。
 空からは相変わらず雪が降り続いている。
「積もるといいですね。」
「そうだな。」
「雪だるま作ろうね!すずちゃん!」
「はい!」
 後ろから聞こえる仲間たちの声に耳を傾けながら、青年たちは小さく笑った。

「・・・なぁ・・・今思ったんだけど・・・」
「なに?」
「もしかしたらこの雪、アミィが降らしてくれたのかもな。」
 じっと空を見上げ、目を細めて妹を偲ぶ青髪の青年の肩を、金髪の青年はそっと叩いた。
「そうだね。アミィちゃんから僕たちへのクリスマスプレゼントかもね・・・」
「そうだな・・・」
 2人はそのまま、いつまでも空を見上げていた。
 雪を降らしてくれた空に、そして今は亡き妹に感謝しながら─

<END>

〜なくてもいいあとがき〜
 え〜っと・・・とりあえずクリスマスネタです。
 またしてもアミィちゃん出てますね〜
 そこまで好きか!?ってかんじです。
 ・・・いや、大好きなんですよ。アミィちゃんは。
 ほんとはもっと短めに抑えるつもりでした。
 が、なにぶん駄文書きなもんで、ちゃんと予定通りまとまりませんでした。(爆死)
 修行全然足りてませんね。ほんとに。

 それでは最後になりましたが、読んで下さりありがとうございました。(←りさたろうさんのコメントです。)



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