りさたろうさんに頂いた暑中お見舞いの小説です。
 天の川にちなんだファンタジアの6人のオムニバスです。
 天の川にマッチしたロマンチックなお話です。りさたろうさんありがとうございました。
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 あたしの頭上に広がる満天の星空。
 とても綺麗で、それでいてどこか寂しげに光り輝く星々。
何故か胸がきゅっと痛んでしまう。
 ・・・何なんだろう・・・?
 そうしてぼんやりと眺めているうちに、あたしはいつのまにか、昔教えてもらったことを思い出していた。

─流れ星に願い事をすると、その願いが叶うんだ─って・・・


Tales of Phantasia  After Days 〜星に願いを〜

1.アーチェの願い
 あたしはぼんやりと空を眺めていた。
 2ヶ月前、あたしは長い長い時空を越える旅を終えた。
 それからは・・・何もする気が起こらないんだ。
 だから暇を持て余しているあたしは時々色んな所に遊びに行った。
 クラースのいるユークリッド。
 ルーングロムのいるアルヴァニスタ。
 ナンシーとエルウィンのいるベネツィア。
 お母さんのいるエルフの集落の近くとか・・・
 でも1度も行っていない場所がある。
 それはハーメル。リアの住んでいた場所。
 辛いんだ。
 ワザワザ行って、リアがもうこの世の何処にもいないんだって考えるのが。
 もう2度とリアの笑顔を見ることができないんだって思うと・・・締めつけられたように胸が痛い。
 ぽっかりと心に穴が空いているように感じられる。
 その中は真っ暗で、ちょうど今見上げている夜空のよう。

 あたしは空いっぱいに広がっている天の川に目を向けた。
 そういえば・・・リアが言ってたっけ。
 天の川は死者の魂が集まっている所なんだって・・・
 もしかして、リアの魂もあそこにあるのかもしれない。
 手を伸ばせば届きそうなくらい近くにある宇宙(そら)。
 そこにいるよね?リア。
 箒であそこまで飛べたらいいのに。
 飛べたら・・・リアに会えるのに。
 リアにはたくさん話したいことがあるんだ。
 クレスのこと。
 ミントのこと。
 クラースのこと。
 すずちゃんのこと。
 ・・・そして・・・アイツのこと。
 いっぱい話して、またリアの笑顔を見たいよ。
 会いたい
 会いたいよ・・・リア・・・
 あんたに会いたい。
 みんなに会いたい。
 アイツに・・・会いたい・・・
 みんなに会えるようになるまで、あたしはあとどれくらいこの星空を眺めて過ごせばいいんだろう?
 時々不安になる。本当に会えるようになるの?と。
 もしかして、あたしは100年後の世界にはいないかもしれない。
 もしかして、あたしが旅した世界と今あたしがいる世界は全く別の未来が用意されている世界かもしれない。
 不安になる。
 すぐ先が見えないくらい真っ暗なところに1人立たされているみたいな・・・そんな感じすらする。
 一寸先は闇。そんな感じ。
 だから・・・今は祈ろう。この星空に。
 天の川にある、リアの星に。
 みんなともう1度出会えますように・・・
 あたしの先(みらい)を、光が照らしますように・・・


2.クラースの願い
「クラース!!」
 バタン!と派手な音を立てながら、私の部屋に突然乱入者が現れた。
「ちょっと!ねぇ来てよ!!」と、私の体を揺さぶる。
 だが私はそれを無視するように、体を丸まらせてもう1度寝ようとしたのだが、
乱入者は強引に私がくるまっていた布団を引っぺがし、更に体を強く揺さぶった。
 いつもなら寝てても放っておかれるはずなのに、今日に限って乱入者はなおも私を起こそうとする。
「クラース!!」
「うわっ!!」
 耳元で叫ばれ、一瞬で飛び起きた私の目の前には、乱入者・ミラルドが仁王立ちでこちらを見下ろしていた。
「あ、やっと起きたのね。」
 あっさりと言ってくれる。
 思いっきり彼女を睨んだのだが、私の視線はいとも簡単に無視されてしまった。
 ・・・全く、いい加減にしてほしいもんだ。
 昨日の晩から夜明けまで徹夜で研究資料を読んでいた私としては、静かに眠りたいのだが・・・
 しかし、乱入者は私の気持ちにはこれっぽっちも気付かず、何度も何度も私の名前を呼びながら体を揺さぶるので、折角眠ろうとしていた私の体と意識はいつのまにかすっきりと目覚めてしまったのだ。
「・・・で、一体何の用だ?」
「あのね!こっちに来て!」
 用も告げずに私の腕を引っ張るミラルド。・・・何をそんなに慌てているのだろう?
「どうしたんだ?」
「いいからっ!!」
 強引にぐいぐいと腕を引っ張られ、私は自室から連れ出されてしまった。
 連れていかれたのは、リビングの窓際。
「ミラルド、一体・・・」
「上見て!上!!」
 まるで子どものようにあどけなく笑いながら、ミラルドは腕を空へと向ける。
 上?一体・・・私は不思議に思いながらも空を見上げた。
 
 闇夜に浮かび上がる双月、シルヴァラントとテセアラ。
 ・・・と、月の周りを1筋の光が走った。
 いや・・・1筋ではない。2筋・・・3筋・・・次々と光が闇夜を走る。
「流星・・・」
「そう!流れ星!!」
 私のつぶやきに続いてミラルドが口を開いた。
「すごいでしょ?こんなに降るのは20年ぶりですって。」
「20年周期の流星群か・・・確かシルヴァラントとその軌道上にある衛星・ガイオスとの間を・・・」
「もう!またそんなこと言って!」
 夢がないわねぇ・・・と呆れながら私を見るミラルド。
 私の性分なんだから仕方ないだろうが。流星を見て飾り立てた言葉を吐けるほど私はロマンチストではないのだから。
「・・・願い事はしないのか?」
「願い事?」 
 キョトンとして私を見つめるミラルド。その仕草が何とも言えず子どもじみて入るものの、どことなく独特の可愛らしさを浮かび上がらせている。
 そういえば言っていなかったんだな。流れ星のこと。
 今教えておかないと、また後で質問攻めにされるのだろうと思い、私は軽く説明をした。
「流れ星が消える前に願い事を唱えると、その願いが叶うらしいぞ。」
 ロマンチックね・・・とミラルドは微笑み、また私をじっと見て訊いた。
「ねぇ・・・クラースは願い事しないの?」
「・・・私は流れ星に願い事をするほどロマンチストじゃないぞ。」
「もう!夢がないわね!そんなことばっかり言って。」
「これは性分だからな。・・・それに・・・」
「それに?」
「流れ星に願わなくても、私の願いはもう叶っている。・・・だからいいんだ。」
「クラースの願いって?」
「それは秘密だ。」
 不思議そうに首を傾げるミラルドに私は答えると、そっと彼女の肩を抱いた。
 彼女の薬指で光る指輪。
 それが長い間、私が願っていたものの証。
 そう。私の願いはとっくに叶っている。これ以上のことなど願えないくらい、私は幸せなのだ。
 この世で1番大切な人を手に入れたのだから。


3.クレスの願い
「・・・もうすっかり暗くなっちゃったなぁ・・・」
 僕は独り言を言いながら、夜道を歩いていた。
 すっかり日が落ちてしまい、僕の周りは闇に包まれている。
 それでも僕が迷うことなく歩けるのは、双月と夜空に輝く星たちのおかげなんだ。
 双月が光り輝き淡い光を放つと、それにつられるように星々もチカチカと瞬いている。
 星たちの光は僕の足下に注ぎ、辺りをぼんやりと明るく照らしていた。
 僕は夜が好きじゃない。前はそんなこと考えたこともなかったけど、生まれ育った村をめちゃくちゃにされ、たった1人でユークリッドの町へと向かったあの夜のことを思い出すから。
 今まで当たり前だと思っていたものをあっという間に失って・・・辛くて寂しくて悲しくて・・・これは夢なんだと思いこもうとしたあの夜を思い出すたび、僕の心は針で刺されたみたいにチクチクする。
 この痛みは何なんだろう?
 チェスターは感じているんだろうか?知っているんだろうか?
 僕は少し立ち止まり、空を見上げた。
 僕の頭上には、数えることができないくらいたくさんの星たちが光を放ち、輝いていた。
 一瞬、真っ黒な夜空に一筋の光が走った。
「え?」
 目をこすり、もう一度空を見上げる。だが、そこにはもう何もなかった。
 流れ星なのか・・・?僕は空を見上げながら考える。
 寂しさと哀しさと辛さを思い出させる色にほんの一筋の光。
 あの光は僕の心の闇を取り除いてくれるのではないのか・・・?そんなふうに錯覚してしまう。
「流れ星・・・」
 聞き慣れた声が僕の前から聞こえた。じっと目をこらして前を見つめると、黒いシルエットが徐々に薄れ、女の子が姿を現した。
「あ、クレスさん。」
 女の子は僕の姿に気がつくと、長い金髪揺らしながら どうしてここにいるのですか?と訊いた。
「あ、あの・・・君を迎えに行けってアーチェに・・・」
「あ、ありがとうございます・・・」
「どういたしまして。」
 僕たちは言葉を少し交わしてから、黙って並んで歩き始めた。
 不思議なことに、彼女と歩いていると僕は、いつのまにか落ちつきを取り戻していた。あの夜のことを考えていたのに。
 空を見上げると、相変わらずたくさんの星たちが頭の上に広がっていた。
 すると、また闇の中にすっと一筋の光が走った。
「「流れ星・・・」」
 呟いてから、声が二重になっていたのだと気づき、僕は隣を見た。
 隣を歩く彼女も僕を見上げていた。
 僕と彼女の視線が交じり合う。
 一瞬の沈黙。
「あ、あのさ・・・」
 この沈黙をなんとかしたくて、思わず言葉を発する。
「はい?」
「流れ星に願い事をすると、その願いが叶うんだって・・・聞いたことあるんだ。」
「・・・ねがいごと・・・ですか?」
「うん。消える前に願いを唱え終えないといけないらしいけど・・・」
「・・・クレスさんはお願い事したんですか?」
 僕の目をじっと見つめながらミントが訊く。
 僕は一瞬だけど、言葉に詰まった。
 昔、ずっと子どもの頃に教えてもらったこの“おまじない”が効くのかどうか・・・僕はこのおまじないをしたことがないからわからない。
 ・・・でも・・・
「ううん・・・僕はしたことないんだけど・・・でももう1度流れ星が出たらお願いしてみようと思う。」
「そうですか・・・」
 ミントは独り言をつぶやくように言うと、じゃあ私も今度試してみますね。と笑った。
 彼女の笑顔を見ると、僕は安心できる。。
 真っ暗な夜空に走る一筋の光のように、僕の心を優しく照らしてくれる。そんな風に感じる。
 彼女がいてくれれば、僕は強くなれるんだ。
 彼女の笑顔を見つめながら、僕は改めて思ったんだ。今は“おまじない”を信じてみようと。
 願い事はひとつだけ。

 もうあの日の夜のことを思い出しても、強くいられますように・・・


4.ミントの願い
 なんて寂しそうな顔をするんだろう。
 彼は夜空を見上げると、とても悲しそうな・・・寂しそうな目をする。
 はじめは私の単なる思い過ごしかと思った。
 でも、そうじゃない。彼の瞳に映るものは、夜空ではないのだと気づくのに時間はかからなかった。
 何を思っているの?
 何を見つめているの?
 私は・・・貴方に何かをすることができるの?
 問いかけたい。
 でもそれは言えない。
 だって言ってしまえば、貴方はこう言うから。
─なんでもないよ。─
 そう言って、また寂しそうに笑うから。
 貴方に何かしたいのに。
 でも、私は何をすればいいかわからないの。
 こんなに何かをしたいと思ったことは初めてなのに。

 彼の気持ちに少しでも近づきたくて、私も夜空を見上げた。 
 夜空を見ると思い出す。
 昔、私がずっと小さい頃に亡くなったお父さんのことを。
 私はとても小さかったからあまりお父さんのことを覚えていない。
 でも、ぬくもりは覚えている。
 小さな私を膝の上に乗せて、夜空を見上げながら「あの星の集まりからまた星が生まれるんだよ。」と何度も優しく話しかけてくれた。
 私には難しい話だったけど、それでも夜空を見上げて嬉しそうにしているお父さんの話にずっと聞き耳をたてて「すごいねぇ」と笑いかけていたの。
 あの時のぬくもり、優しさを私は忘れない。
 私にもできるのかしら?
 お父さんが私に与えてくれた“ぬくもり”や“優しさ”を誰かに与え、それを相手の心に残すことが。
 もしできるなら、私は彼の心にそれを残したい・・・

 すうっ・・と、夜空に光が走るのが見えた。
 「「流れ星・・・」」
 思わず口にした言葉が、声が2重になっているのに気づき、私は隣を歩く彼を見つめた。
 お互いの視線が交じり合い、彼が先に言葉を発する。
「流れ星に願い事をすると、その願いが叶うんだって・・・聞いたことあるんだ。」
「・・・ねがいごと・・・ですか?」
「うん。消える前に願いを唱え終えないといけないらしいけど・・・」
 そう言って目を細めて笑う彼。だから訊いてしまった。
 お願い事をしたんですか?と。
 もしかして、あなたの瞳の奥にある悲しみに私が触れることができるかもしれないから。
「ううん・・・僕はしたことないんだけど・・・でももう1度流れ星が出たらお願いしてみようと思う。」
「じゃあ私も今度試してみますね。」
 私はそう言って彼に笑いかけた。
 中々自分の思い通りの答えなど、返ってこないことはわかっていたけど、少し期待してしまった。
 だって貴方が今度は心の底から“笑った”のだから。
 だから、今度流れ星が流れたら、私もお願いしてみよう。
 私もお父さんのように“ぬくもり”や“優しさ”を大切な貴方に伝えることができますように・・・って。

 ね、クレスさん?


5.すずの願い
「すずちゃん。どうしたの?」
 後ろから声を掛けられて振りかえると、縁側の上からメルさんがこちらをじっと見つめていた。
「空を見ていたんです。」
「空?」
「はい。今日は星がとても綺麗ですから・・・」
 私の言葉に触発されたのか、メルさんはぴょんと縁側を飛び降りると、こちらにやってきて空を見上げた。
「うわぁ・・・ほんと。綺麗ねぇ・・・私、こんなに星空が綺麗だなんて知らなかったよ。」
「・・・メルさんのところでは星が見えないのですか?」
「あ、別にそうじゃないんだけど・・・なんて言うかな・・・家の光の方が明るいっていうか・・・それで星の光があんまり見えないんだ。」
「ここには“でんき”がありませんからね・・・」
「そうだねぇ・・・でもそれって素敵だと思うよ。だってこんなに綺麗な星空を見られるんだから。」
 メルさんは私ににっこりと笑いかけた。
 メルさんは突然やってきた未来からのお客様で、私にとっては“友達”と呼べる人。
 そして・・・クレスさんたちとの関わりを少しだけ持っている人。

 伊賀栗忍者の頭領としての毎日を送っていた私は、周りからは“頭領”としか見られなかった。
 でもメルさんは私をひとりの女の子“藤林すず”として扱ってくれる。
 嬉しかった。私をひとりの人として認めてくれているみたいだから。
 
 私はもう1度空を見上げた。・・・と、夜の闇に一筋の光が走る。
 あれは・・・
「ねぇ!すずちゃん!!さっきの見た?」
「はい。」
「私、初めて見ちゃった!!流れ星だよね!?」
「そうです。」
「すっごい綺麗だね!!」
 初めて見る流れ星に興奮して、メルさんが嬉しそうに言葉を重ねる。
 私もまるで自分のことのように嬉しくなって、思わず笑ってしまった。
「メルさん。」
「なぁに?」
「流れ星にお願い事をすると、その願いが叶うって話、知ってますか?」
 ふるふると首を横に振るメルさん。やっぱり知らなかったみたい。
「昔聞いた話ですが、流れ星が消える前に願い事を言うと、叶うそうです。」
「へぇ〜そうなんだ・・・」
「はい。」
「ねぇすずちゃん。」
「なんですか?」
「また流れ星が出たら、すずちゃんは何をお願いするの?」
「・・・私は・・・そうですね・・・」
 私は空を見上げながら考えた。
 私の願い・・・それは・・・
 まぶたを閉じると浮かんでくる。あの時の、1年前の旅のことが。
 みんなと共有した時間の出来事が浮かんでは消え、浮かんでは消え・・・次から次へと思い描くことができる。
 みんなと出会わなければ、私は今こうしてメルさんと一緒に空を見上げてはいなかっただろう。
 たった1人で空を見上げて、ため息を吐いていただけだと思う。
 “流れ星のおまじない”のことも知らずに、寂しそうに空を見つめていただけかもしれない。
 みんなと出会えたことに私は感謝したい。
 みんなと出会わなければ、私は笑うことも、友達を作ることもできなかっただろうから。
 そんな私の願い。それは・・・


 もう1度、みんなと会えますように─


6.チェスターの願い
 夜空を見ると思い出す。
 たった1人でトーティスに残った夜のことを。
 崩れかかった部屋の中で、冷たくなったアミィの側にいた、あの夜のことを。
 あの夜の間中、ずっと考えていた。
 アミィや多くの村人が死んでしまったのに、どうしてオレは生きているんだろう?と。
 オレとクレスだけが生き残った。
 あの日の事件の後、クレスはユークリッドへ旅立ち、オレはそれを見送った。
 本当はクレスと一緒に旅立てば良かったんだろうけどオレにはできなかった。
 アミィに、この村の人たちに申し訳ない気がしたから。
 アミィが苦しんでいたその瞬間、オレはクレスと遊びのような狩りを楽しんでいたんだ。
 そして、オレは死ぬことを免れた。
 みんな死んでしまったのに、オレたちだけ生きているなんて、なんとも滑稽だ。
 それと同時に、生き残ってしまったことへの罪悪感がオレの心に募った。
 だから・・・オレはアミィや村人のための墓を作った。
 ただの自己満足でしかないのはわかってる。
 わかっているから・・・あの夜のことを思うたび、オレの心は痛みを増すんだ。
 きっとクレスもこの痛みを持っているんだと思う。
 夜空を見上げるたびに、哀しそうな目をしているから。

 空を見上げると、頭の上には真っ暗な夜空が広がっていた。
 あの時と同じ・・・あの夜と同じ暗い空。
 ・・・と、暗闇に一筋の光が走った。
 続けて2つ、3つ・・・光が次々と走る。
「流れ・・・星・・・?」
 オレは口をぽかんと開け、ただただそれを見つめていた。
 そして・・・思い出したんだ。
 昔アミィが言っていたことを。

─流れ星にお願いごとをすると、その願いが叶うんだよ─

 アミィの声が何処からか聞こえたような気がした。
 
 夜空から視線を外し、遠くに広がるトーティスの家々の灯りを眺めていると、もしアミィが生きていたら・・・そんな考えが頭をよぎる。
 わかっているんだ。そんなこと、もう有り得ないということくらい。
 今オレが生きている世界にはアミィは何処にもいない。
 オレとクレスが生き残った。それが事実だ。
 現実をしっかり見て、生きていかなきゃいけないんだ。
 あの日、死んでいった多くの人たちの分まで。

 オレはもう1度夜空を眺めた。
 相変わらず流れ星が次々と降り注いでいる。
 次から次へと流れる流れ星。
 前にクラースの旦那から聞いたことがある。 確か流星群・・・とか言うやつだ。
 オレは空を見上げながら、静かに目を閉じた。
 流れ星がこんなに流れているんだから、絶対に願いを唱え損なうことはないし、叶わないはずがない。
 だからオレは心の中で願ったんだ。

 幸せになれますように。
 できることなら、トーティスの村の人たちの分まで、アミィの分まで・・・


<あとがき>
 6人オムニバス(っぽいもの)をまたしてもやってしまいました。
 一応、全体を通してあの旅を終えたイメージですね。・・・一応。
 またしても全体を通して「妹」の影がチラホラしております。
 それにしても今回暗いですね〜〜・・・なんか。
 夜空も暗いし、内容も暗い!!
 一応雰囲気はあってる!・・・ハズ。(ぉ)
 
 雰囲気的には「夏」を意識したのですが、ダメです。全く・・・
 夏らしくないですね〜・・・
 ネタを仕込んでいるときには、夏=ペルセウス座流星群 のイメージがあったのですが、別に夏でなくても流星見られるやん・・・ということに書いてから気づきました。(爆死)

 ああもう すいません・・・もう1度修行してきます。
 最後になりましたが、読んでいただきありがとうございました。m(_ _)m